二十ノットに速度を上げよと、電話は機関部にとどいた。
「おう、二十ノット」
命令は、伝声管や高声器でもって、半裸体で働いている部員に伝えられてゆく。
「二十ノット。よろしい、いま重油の弁《バルブ》をあけるよ」
弁を預かっていた面長な男が、大きなハンドルをしずかにまわしながら、計器の針の動くのをじっとみつめている。と、突然、
「おや、お前は誰だ」
そこへ監督にやってきた機関大尉フランクが、うしろから呼びかけた。
面長な東洋人は、フランクの声が聞えないふりをして、なおもしずかにハンドルをまわしていた。
「ええ、二十ノット、出ました」
彼は落着いた語調で、伝声管の中に報告をふきこんだ。
諸君、このものしずかな東洋人は、一たい何者であったろうか。
怪東洋人
まっ暗な南シナ海の夜であった。
文明の怪物ともいうべき飛行島は、いま波濤を蹴って、南へ南へと移動してゆく。
飛行島の前後左右は、それをまもる艦艇がぐるっととりまき、一片の浮木も飛行島に近づけまいとしている。
空には、空軍の精鋭が、かたい編隊をくんで、もし空から近よる敵機あらば、何国のものたるをとわず、一撃
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