当に帰艦したわけではなく、指をくわえて待ちくたびれている兵員たちに、すこしでも早く、この珍奇な飛行島の様子を知らせてやろうという友達思いの心からだった。
「おい、早く飛行島の様子を知らせろ」
と、艦内から旗のない手旗信号をやっている兵がある。
帰ってきた水兵は、桟橋の上から、これに応じてしきりにこれも手旗信号をやっている。
その信号を読んだ艦内の水兵が顔をくずして仲間の者に呶鳴《どな》る。
「おい、上陸人の斥候《せっこう》報告があった。上には食堂のすばらしいのがあるぞう。酒も洋酒だが、なかなかうまいそうだあ。――ああ、なに、うんそうか、土産ものも売っとるう、写真に絵はがき、首かざり、宝石入指環、はみがきに靴墨。――ちぇっ、そんなものは沢山だ」
怪事件突発!
なにしろこういう絶海の孤島も同じようなところで、まっくろになって昼夜を分かたず、激しい労働に従っている人たちが三千人もいるのであるから、人間の心もあらくなっている。だから彼等をなぐさめるために、食堂とか酒場とか映画館その他の見世物までもあり、人気のわるいことは格別であった。
もちろん非番の者にちがいないが、ぐ
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