梨花は声をあげて泣きだした。
杉田二等水兵はベッドに寝たまま、枕から頭をもたげ、
「おいおい、いい加減にして喧嘩はやめにしろ。――といったって、俺の日本語は一向相手に通じやしない。どうもこいつは弱った」
と、また頭を枕の上にどしんとおいて、眼をつむった。
「この硝子は高いんですよ。お前なんかが一年働いたって、二年働いたって、買えるような硝子じゃなくってよ」
と、白人の看護婦は、にくにくしげに梨花をにらみつけた。どうやら、まだまだ小言が足りないといった様子だ。
「あ、そうだ」
杉田二等水兵はまた枕から頭をもたげた。そして両手を出して、手真似をはじめた。
はじめ白人看護婦を指して右の人さし指を一本たて、こんどは梨花を指して左の人さし指を一本立てた。そしてそれを向かいあわせにもってきて、ぴょこぴょこさげ、両方の指がしきりにお辞儀をしているような型をやって見せた。
梨花は、顔をあげて、杉田二等水兵の指芝居をながめている。白人看護婦の方は、腕ぐみをしたまま、ちらと見て、
(わかっているよ、わかっているよ)
と、頤をしゃくってみせた。
杉田二等水兵は、尚《なお》仲直りをさせようとし
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