あの飛行島で二十四時間を過すことになっている。その間に士官候補生たちはこの最新の海の怪物の見学をする予定だった。
艦内では、いよいよ繋留《けいりゅう》用意の号令が出て、係の兵員は眼のまわるような忙しさだ。
午前十時四十八分、須磨明石の両艦は遂に歴史的の構築中の飛行島繋留作業を終る!
物事に動じないわが海軍将兵も、この飛行島の大工事には少からず驚いた。
なんという途方もない大構築だろう。
地上でもこれほどのものはあるまいと思われるのに、波浪狂う海洋の真只中の工事である。
(これが、人間のやった仕事だろうか?)
と、ただ眼を瞠《みは》るばかりである。
士官候補生たちもよく見た。祖国を出るまえ靖国神社参拝のとき見た東京駅なんか、くらべものにならない。
飛行島はU字型になっていた。
海上へ出ているのは、大きなビルディングの寸法でいうと、三階あたりの高さに相当する。下から見ると、その飛行甲板が大きな屋根のように見える。
飛行甲板の下は、太い数十本の組立鉄塔で支えられている。その鉄塔は水面下に没していて下はよく見えないが、話によると一本一本のその鉄塔は下に大きな鉄筋コンクリート
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