関大尉の肩をたたいて哄笑した。
 丁度そのときだった。
 前檣楼の下の桁《ヤード》に、するすると信号旗があがった。下では当直の大きな叫声《さけびごえ》!
「右舷寄り前方に、飛行島が見える!」
 おお飛行島!
 いよいよ飛行島が見えだしたか。
 非番の水兵たちは、だだだっと昇降口をかけあがってくる。


   飛行島上陸


 望遠鏡をとって眺めると、水天いずれとも分かちがたい彼方の空に、一本の煙がすっとたちのぼっている。
 煙の下に焦点をあわせてゆくと、なんだかマッチ箱を浮かせたようなものが見える。まだまだ飛行島は、はるか二十キロの彼方だ。
 士官候補生は、艦橋に鈴なりとなって、双眼鏡を眼にあてている。
「あれが飛行島か。なるほど奇怪な形をしているわい」
「あのなかに、三千人もの人が働いているんだとは、ちょっと思えないね」
「誰だ、いまから驚いているのは。そんなことでは傍まで行ったときには、腰をぬかすぞ」
 軍艦須磨と明石は、信号旗をひらめかしながら、ぐんぐん飛行島さして進んでゆく。
あと三四十分もすれば、その横につけることができるであろう。
 艦隊は、前もって打合せをしてあるとおり、
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