動ぶりであった。
風はしきりに吹き募り、暗夜の海面に、波浪は次第に高い。赤や青や黄の艦艇の標識灯さえ、ときには光を遮られ、しばらく見えなくなることさえあった。それは艦首にどっとぶつかる怒濤が、滝のように甲板上に落ちてくるせいだった。
「ほう、外はいよいよしけ[#「しけ」に傍点]模様だな」
「うむ。しかし不連続線だそうだよ。いまにはれるだろう」
細い艦内通路を、肩をならべて歩いてゆく若い士官の会話だ。
出航用意からはじまってここまで、まるで火事場のような忙しさの中にきりきり舞をしていた飛行島の乗組員たちは、やっと一息つく暇を見出した。艦内士官酒場へ入ると、そこではしきりにコップのかちあう音がきこえ、葉巻の高い香が匂っていた。
「一たいこれからわが飛行島は、どんな任務につくのかなあ」
若い機関部の士官が、これはまた頼りない質問を、ある主砲の分隊付をしている同僚に出した。
「なんだ、これからどんな任務につくのかだって、そいつは、いくら機関部だって、ひどい質問だ。分かっているじゃないか、日本の本土を南の方角から強襲するのだ」
「やっぱりそうか。南の方から強襲するのか」
「なあんだ、君にも分かっているんじゃないか」
「そういう話は、機関部でも、もっぱらの噂なんだ。しかしそう簡単に、敵の本土に近づけるかなあ」
と、たいへん心配そうである。
極秘の作戦
「ははあ、分かった。君は日本の艦隊がどのように猛烈な抵抗をするか、それを心配しているんだろう」
と、分隊付の士官は、赤い顔を前につきだした。
「そうさ。大きな声ではいえないが、連盟脱退後の日本艦隊はどこまで強いのか、底力の程度がわからないてえことだぜ」
機関士官は、だいぶん恐日病にかかっているらしい。
「心配するな。こっちの作戦にもぬかりはないんだ。いいかね、こうなんだ。近くウラジボを根拠地とするソ連艦隊が、北方から日本海を衝こうとする一方、われわれは南から同時に衝く。そうなると日本の艦隊は、いきおい勢力を二分せにゃならんじゃないか。そこが付け目なんだ。日本の艦隊をして、各個撃破の挙に出でしめないのが、そもそも英ソ軍事同盟の一等大きな狙所《ねらいどころ》なのだ」
「ふーむ、うまいことを考えたなあ」
機関士官は、嬉しそうに、はじめてにやりと笑った。
「それみろ、いくら優勢海軍でも、二分されては、一匹の鮫
前へ
次へ
全129ページ中110ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング