をする者もあった。
皆は一旦解散したのち、自分の荷物をまとめると、また飛行島の甲板の所定の位置へ帰ってきた。爆笑の花園みたいである。誰の機嫌もいい。
そのうちに、海底牢獄につながれていた囚人までが解放されたうえ、これにもやはりそれ相当の慰労金をさずけられ、甲板へさしてにこにこ顔で現れたのには、皆をさらにおどろかせたり、よろこばしたりなどした。
「リット少将てえのは、あんなに話がわかる人だとは、今日の今日まで思ってなかったよ」
「そうよなあ。まったくお前のいうとおりだ。リット少将さまは、話がわかりすぎて、気味がわるいくらいだよ。俺はな、うちの女房に、ダイヤモンドの指環をかってやるつもりだ」
いやもう、どこの固まりでも、リット少将は福の神さまのように、あがめられていた。
とうとう夜になった。
甲板は、真昼のように明るく照明されている。二万四千トンの輸送船ブルー・チャイナ号は、桟橋にぴたりとよこづけになり、皆の乗りこむのを待っている。
しかし乗船命令は、なかなか出なかった。
午後八時が九時になり、十時になった。
そろそろ不平をいう者も出てきた。
英国軍人以外は皆立ち去らせるので、島内の捜索をさらに厳重にやっていて、それで出発時刻がおくれるんだと、どこから聞きこんだのか、したり顔に説明する者もあった。
午後十時が、十一時になり、十二時をまわった。
「今夜はもう出発とりやめで、明朝に延期になるんだろう」
などと噂しているところへ、午前一時になって、突然乗船命令が出た。
一同は、水兵たちの制するのもきかず、われがちに桟橋へ殺到した。それを一人一人乗船させる。
三千何百人の乗船には、たいへん手間どった。時刻は午前二時半になった。
囚人も皆のりこんだ。
一番後から乗ったのは、白い病衣をまとった東洋人を中心にした四人づれであった。白い病衣は外ならぬ杉田二等水兵の姿であった。傍には、可憐なる梨花と二人の英国人看護婦もつきそっていた。
ああ皆、船にのって飛行島を出てゆくのだ。ああ意外も意外杉田二等水兵も、これでついに一命を拾ったらしい。まことに意外なるリット少将の慈悲ではある。
司令塔からは、リット少将が双眼鏡片手ににこにこ笑って、この有様を見ている。
非道と正義
フランク大尉が唇をぶるぶるふるわせ、つかつかと少将の傍へよって来た。
「少
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