にピストルの引金をひいた。
印度人の魂ぎる悲鳴――空をつかんで、鉄板の上に倒れた。
「あ、仲間を殺したな。それ」
残りの印度人は、鬨《とき》の声をあげて、うわーっととびだしてくる。
だーん、だーん。
フランク大尉は、電灯の光に見える敵を夢中で射撃する。
飛道具をもたぬ印度人は、かわいそうなほど、ばたばた倒れる。気の毒にも、みんなフランク大尉の弾の犠牲になるかと思われた。そのとき――
がちゃーん。
電灯が消えた。誰か電灯にスパンナーをなげつけた者がある。またつづいて、電灯はがちゃんと消える。
室内は暗黒となった。
エンジンを操作しながら、川上機関大尉の情《なさけ》の早業だったのだ。
実をいえば、第四エンジン係のゼリー中尉以下がぶっ倒れたのも、川上機関大尉のやったことであった。彼は、万一の用にもと肌身はなさずつけていた、ある無色無臭の毒瓦斯を室内に放ったのであった。
フランク大尉に、三十六基のエンジンの仕様書をさがして持ってくるようにと、副官の声色を使って電話をかけたのも、これまた川上機関大尉であった。
それからまた印度人の脱獄も、川上機関大尉が手を貸したのであった。その中には、彼がこの飛行島へ上陸以来、人にかくれていろいろ彼の面倒をみてくれた印度志士コローズ氏もまじっていたのだ。
なぜ川上機関大尉は、こんなことをやりだしたのか?
彼は、飛行島というものを、隅から隅まで調べてゆくにしたがって、それが彼の考えていたよりもはるかに恐しい攻撃武器であることが分かったからだ。
はじめのうちは、構造や性能などがあらまし分かれば、あとは勇敢無比を世界に誇るわが海軍の爆撃機や軍艦でもって、とにかくぶっ潰せるものと思っていた。
ところが、島内をしらべてゆくと、なかなかそんな生やさしいものではない。いかに勇敢無比なわが海軍の精鋭をもってしても、これは相当の犠牲を出さないでは攻めおとすことができないと分かった。なにしろ二十インチの巨砲である。ものすごい高角砲である。べらぼうに厚い甲板の装甲である。恐しく用心をした二重三重の魚雷防禦網である。これでは何をもっていっても、ちょっと歯がたたないように思われる。なるほど、大英帝国が莫大な費用と全科学力とをかたむけて造っただけの大飛行島である。
難攻不落の浮城だ。
「これは帝国海軍にとって実に由々しきことだ」
川上
前へ
次へ
全129ページ中98ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング