せずにゃいられない。これは、福の神が、向こうからころげこんできたぞ」
 トラ十は、にわかに上きげんになった。そして箱を拳《こぶし》でたたきこわすと、中から、白い布をまいた長いものを取り出した。
「おれが、あけてやろう」
「これ、お前は動くな。動くと、これがものをいうぞ」
 トラ十はゆだんをしない。彼は右手にピストルをもち、左手で、その布をほどいた。中からは包紙《つつみがみ》が出て来た。
「いやに、ていねいに巻いてあるなあ。よほど大事なものと見えるが、厄介千万《やっかいせんばん》じゃないか。おや、まだ、その下に別な紙で包んである。これはかなわんなあ」
 トラ十はだんだんじれながら、何重もの包を、つぎつぎにほごしていった。そのうちに最後の油紙包がとかれて、中からチョコレート色の、五十センチばかりの棒がでて来た。それこそ、X塗料を固めたものであった。それを、ある特殊な油を使って溶かすと、X塗料となるのだった。
「おや、へんなものが出て来やがった」
 とつぜん、帆村は猛然と飛びこんだ。塗料の棒に見入るトラ十のからだに、わずかの隙《すき》を見出したのであった。帆村の鉄拳《てっけん》が、小気味よく
前へ 次へ
全217ページ中87ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング