しないとはかぎらないのであった。宿直員は全身の神経をひきしめて、たえず行手を警戒しているのだった。
「船長」と、当直の二等運転士が、よんだ。
「おい、なんだ」
「今、無電室から、報告がありました。今夜はどういうものか、ひっきりなしに、本船へ無電がかかってくるそうです。非番のものまでたたき起して、送受信にとてもいそがしいと、並河技師からいって来ました」
「うーん、そうか。横浜入港が明日だから、それで無電連絡がいそがしいのだろう」
「いえ、いつものいそがしさではないのです。ひっきりなしに、本船を呼びだし、あまり重要でもなさそうな長文の無線電信をうってくるのだそうです。たしかにへんです」
「そうか。でも、無電で呼びだされりゃそれを、受信しないわけにもいかないじゃないか。万国郵便条約に反するようなことは、できないからな」
 と、船長はいって、そばに待っている帆村探偵をふりかえり、椅子をすすめたのであった。
 帆村は、さっきから、当直の報告に、じっと耳をかたむけていたが、このとき、大きくうなずくと、
「船長。そういう意味のない長文の無電は、切った方がよろしいですよ」
「おやおや、あなたも、そうい
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