は、船員と水夫とが、一人の若い女をおさえつけていた。
「ああ、一等運転士。この女です。ピストルをうったのは」
「なにっ」
「窓から、中をのぞいていたのです。私が、懐中電灯でてらしつけると、にげだしました。やっと、捕《とら》えたのですが、附近に、このピストルが落ちていました」
「ふーん、それはほんとうか。見れば、まだ年の若い娘のようだが、おや、君はミマツ曲馬団の」と、一等運転士はあきれ顔であった。
 房枝だ!
 狙撃犯人《そげきはんにん》として、そこに捕えられていたのは、房枝だったのである。
 そんなことがあって、いいであろうか。
 房枝は、まっ青になって、肩をふるわせている。
「ちがいます。あたくしじゃありません。ピストルをうつなんて、そんなことのできるあたしではありません」
「そうでもなかろう。曲馬団の娘なら、ピストルなんか、いつもぽんぽんとうっているではないか」
「いいえ、ちがいます。ピストルのことは、なにも知らないのです。ただ」
「ただ?」
「ただ、曾呂利さんが、船長室へ引っぱりこまれたので、心配になって、ここへ上ってきたのです」
「それから、ピストルを出して、あたしの肩をうった
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