そうすると、会って、こっちが聞きたいことを聞くわけには、いかんですかな」
「まあちょっと待ってください。もう三十分ぐらいは」
「そんなに、容体《ようたい》があぶないのかね」
「何ともわからんですよ、それは。すこし、ここに来ているらしいので、警戒しているのです」と、船医は、自分の頭を指さした。
 船長は、困ったという表情で、
「じつは、本船の上を、怪しい飛行機が飛んだことについて、赤石に聞いてみないと、事実がはっきりしない点があるのでね」
「赤石君にきかないでも、外の人だけで、わからないのですかね、私も聞いたが、あれだけはっきりした爆発音だから、それでも分かりそうなものだが」
「いや、ドクトル。どうも、それだけのことじゃないらしいんでね、それで困っとる」
 と、船長は、口を大きくむすんで、
「第一、空襲らしいというのに、本船の者で、誰も飛行機の近づく爆音を聞いたものがないのが、おかしい。もちろん、飛行機の姿も見えなかった」
「船長。爆弾がふってきたんだから、それでもう、飛行機の襲来だということは、たしかではありませんか」
「いや、それが、そうかんたんにきめられないのだ。それに、赤石のたお
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