とでまた、お礼のお金をさしあげます」
ニーナ嬢は、ねっしんに、そして早口で、曾呂利をかきくどいた。
曾呂利は、かすかにうなずいた。
「よろしいですね。わたくし、あなたを信用します。お礼のお金、あとできっとさしあげます。あっ!」
ニーナ嬢は、とつぜん、おどろきのこえをあげた。階段の上に、誰かのわめきごえがきこえたからである。
「約束、きっと、守るのです!」
ニーナ嬢は、最後にもう一度、命令するかのように、曾呂利の耳にのこすと、曾呂利をそこに寝かしたまま、とぶように立ち去ったのであった。
階段の上から、あらあらしい足音とともに、二、三人の船員がおりてきた。
「やっぱり、こっちじゃないかな」
「どうも、こう暗くては、探せやしない」
船員たちは、おりてくると、そこに曾呂利がたおれているのを発見して、おどろいてかけより、
「おう、あなた。ここへ誰か来なかったでしょうか。この階段を、あわてて上からおりてきたものはありませんか」
曾呂利をだき起そうともせずに、いきなり質問だ。
曾呂利は、首をふって、
「誰も、見えませんでしたね。僕は、松葉杖を階段からつきはずして、落ちたんです」
と
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