たんだそうだ。ほかの者が、それを見つけて抱きおこした。爆発の破片で、からだのどこかを、やられたんだろうと思ってしらべてみた。すると、別にどこもやられていない。そのとき、へんだなあと思うことが一つあった。お前たちは、それが分かるか、そのへんだなあという一件が」
「そんなこと、分かるものか。早くしゃべれ」
「それは、奴《やっこ》さんのたおれた場所に、きれいな花が、ばらばらと落ちていたんだ。だから、奴さん、爆弾にやられたんじゃなくて、花束でもって、なぐられたんじゃないかって、誰かそういっていたよ」
「へーえ、花束でなぐられて目をまわしたというわけか。まさか、はははは」
 房枝も、さっきから、この話を、じっときいていたが、ここでおかしくなって、つりこまれたように笑った。
 そのとき、気がつくと、曾呂利本馬の坐っていた席が、いつの間にやら、空になっていた。

   ニーナ嬢《じょう》

 この雷洋丸の一等船客に、一きわ目立って、姿のうつくしい、外国人の令嬢がいた。その名をニーナ・ルイといって、国籍は、メキシコと届けられていた。
 ニーナ嬢は、いつもすっきりした軽い服に、豹《ひょう》の皮のガウンを
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