らべた。トラ十は、明りが往来へもれるのをおそれて、柱のかげへ二人を入れてしらべたのであった。
「どうもおかしい。なにもない」
 トラ十が、ふしぎそうにいった。
「そら、みろ。わたしたちは、なにもかくしていないのだ」
 黒川が、たしなめるようにいった。
「なにをいっているか。おれは、まだ、あきらめているわけじゃない。なければないで、これからもっと御丁寧《ごていねい》に、お二人さんをしらべるだけのことさ。裸にむいても、指の一本二本を切りおとしても、ほんとうのことを白状させてみせるぞ。かくごしろ」
 トラ十は、ざんにんなことを、平気でいう。
 黒川が、それに不服をいうと、とたんに、トラ十のこぶしが彼の頬にとんだ。
 いったいトラ十は、なにをねらって、こんなばかげたことをくりかえしているのだろう。黒川がしらべられると、次は房枝の番になる。裸にされるなんて、いやなことである。
「房枝、うごくと承知せんぞ。お前にはこれが見えないのか」
 房枝が、そっと石段を一段だけ下りようとしたとき、トラ十は、すばやくそれを見てとって、ピストルの銃口で、房枝の背中をついた。
(だめだ、もうのがれるすべはない)
 
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