んなことになっていますよ」
「あら、まあ。そうですか」
夫人は、あわてて顔をおさえた。
「さあさあお早く、こっちへお乗りください。それじゃみっともなくて、白昼歩けませんぞ。鼻緒の切れた草履なんか、どうでもいいじゃありませんか」
この帆村探偵は、少々らんぼうなことをいう。夫人は、見知らぬ少女の好意を無にして、ここを去るのは気が進まなかった。が帆村は、一切そんなことをおかまいなしに、とうとう、夫人を引張りあげるようにして車にのせると、運転手にいそがせて、そのまま大森にある博士邸へ、車を走らせたのであった。
花環《はなわ》と花籠《はなかご》
極東薬品工業前の空地に、蓆《むしろ》をつくって小屋がけして新興ミマツ曲馬団の更生興行は、意外にも、たいへんな人気をよんで、場内は毎日われるような盛況《せいきょう》であった。
団員は、だれもかれも、えびすさまのように、大にこにこであった。中でも、新団長の黒川のよろこびは、ひと通りではなかった。
「おい、お前たち二人でこれからすぐに、電灯会社へいってこい。夕方までに電灯をひいてもらって、今日から、夜間興行をやることにしよう。工事料は現金でも
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