、不注意なのでございました。あなたのお姿につい見とれていましたものでございますから」
「あら、いやですわ、ほほほほ」
 と、房枝は赤くなって笑った。
「いえ、それが、ほんとうなのでございますの。お嬢さまは、しつれいですが、今年おいくつにおなり遊ばしたのでございますか。お教え、ねがえません?」
「まあ、はずかしい」
「ぜひ、お聞かせ、いただきとうございますの。おいくつでいらっしゃいます」
 なぜか、道子夫人は、道ばたで会った初対面の房枝の年齢《とし》を、しきりに知りたがるのであった。なにか、わけがありそうなようすである。
「あのう、あたくし、こんなに柄が大きいんですけれど、まだ十五なんですのよ」
「え、十五。ほんとうに十五でいらっしゃるの。じゃあ」
 といいかけて、夫人は言葉をのみ、しげしげと房枝の顔を穴のあくほどみつめるのであった。
「ああ、奥さま。お履物《はきもの》が、あんなところに」
 そのとき、房枝は、夫人の皮草履の片っ方が水たまりのそばに、裏がえしになって、ころがっているのに気がついた。このままにしておいては、また、後から来た車がひいてしまうであろう。そんなことがあっては、ます
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