、それを追いかけて再び電話が鳴る。それは部下が変電所から掛けた長い報告であった。
 要《よう》は、今しがたの停電は二人の男が変電所の一千ヴォルトの電極に触れて感電死したことによるもので、二人共全身黒焼けとなり一見いずれが誰と識別《しきべつ》し難いが、一人は勤務中であった技手土岐健助、一人は喜多公こと田中技手補である事に相違ない。この惨事《さんじ》の原因は目下調査中であるが、両人の体がからみ合っている所から推して、一方が感電したのを一方が救いに行って仆れたとも見え、或《あるい》は両人の間に何か格闘があって組合ったまま感電したとも思われる節《ふし》がある、との事であった。
「到頭《とうとう》やったか。残念な事をしたな」
 受話器を離した主任は、誰にとも無く呟《つぶや》いて崩《くず》れるように椅子に腰を下した。
 猶《なお》、その後の報告によると、応急修理に高い所へ登った一技手は、奇怪な配線のあるのを発見した。それは故意か偶然か、変電所の壁を通って向いの家の廂《ひさし》へ渡り、其の端が錻力《ブリキ》で作った樋《とい》に触れていたのである。もしこの配線に高圧電気が供給されれば、言うまでもなく樋
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