一方でさあ」と、軽く説明した。然し主任がその位の説明で満足する筈はなく、当分夜の間刑事を吉蔵の店の床下に張り込ませて、何処までも事件の端緒《たんちょ》を掴《つか》むようにと手配した。
一方山名国太郎の失踪については、喜多公を変電所へ張って行った刑事から、偶然《ぐうぜん》手懸りがついた。というのは、変電所主任土岐健助宛の無名の手紙から足がつき、スタンプの消印で栃木県《とちぎけん》今市《いまいち》附近に国太郎が潜伏《せんぷく》していると判ったのである。
いよいよ国太郎が逮捕されたとなると、事件は、何う展開するであろう。国太郎とお由の密会には証人がある事だし、あの夜土岐技手が現場《げんじょう》へ呼ばれた時には、既にお由は死んでいたのだから、国太郎がこの他殺に全然無関係であるという事は説明出来まい。同時にお由の屍体遺棄が明らかになるので、土岐技手にも嫌疑の余地が出て来る。其の夜の勤務は土岐一人で他に証人が無いのだから、国太郎の言う通りお由が露路に一人でいたとすれば、其の間に健助がお由を襲うことも出来たのである。
こうして殺人犯人の嫌疑者は四人となった。
其の翌日の夕方、山名国太郎は今市
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