脳の中の麗人
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)ねえ、博士《せんせい》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)患者|宮川宇多郎《みやがわうたろう》
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   奇異《きい》の患者


「ねえ、博士《せんせい》。宮川さんは、いよいよ明日、退院させるのでございますか」
「そうだ、明日退院だ。それがどうかしたというのかね、婦長《ふちょう》」
「あんな状態で、退院させてもいいものでございましょうかしら」
「どうも仕方がないさ。いつまで病院にいても、おなじことだよ。とにかく傷も癒《なお》ったし、元気もついたし、それにあのとおり退院したがって暴《あば》れたりするくらいだから、退院させてやった方がいいと思う」
「そうでしょうか。わたくしは気がかりでなりませんのよ」
「婦長。君は儂《わし》のやった大脳移植手術を信用しないというのかね」
「いえ、そんなことはございませんけれど……」
「ございませんけれど? ございませんが、どうしたというのかね」
「いいえ、どうもいたしませんが、ただなんとなく、宮川さんを病院の外に出すことが心配なんですの。なにかこう
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