って来た。赤羽主任が、尚《なお》もその先を辿《たど》って見ると、その電線の一端《いったん》は、電灯線の所謂《いわゆる》第四種線に絡《から》まって由蔵の屍骸の傍に終ってい、他の一端を探ってみると、棟木《むねぎ》の上に、ベルに用いるようなマグネットがあって、更に下部《かぶ》へ降りて男湯の天井を匍って電気風呂の男湯の配線の中へ喰い込んでいた。専門外のこととて瞭《はっき》りしたことは判らなかったが、とにかく、簡単ながら、男湯の電気風呂へ、何かの仕掛けが施《ほどこ》されていることだけは、誰にも首肯《しゅこう》されたのであった。
 赤羽主任の脳裡には、漸《ようや》く事件の綾《あや》が少しずつ明瞭になってくるのを覚えた。そして、此の事件の犯人は、この天井裏に潜伏していて、望遠鏡と活動写真撮影機とを使用して、女湯の天井から、犯人の恋人ででもあるらしい肉体美の女を殺し、その藻掻《もが》き苦悶《くもん》して死んでゆく所を、活動写真に撮影しようと思ったのでもあろうか。つまり一種の変態性慾者である。そして、その犯行を遂《と》げるために、最初、男湯に強烈な電流を通じて、浴客の一人を感電せしめ、その混乱から人々の
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