ずひとりごとをいいました。


   穴のなかの人


 だれもしらないことですが、飛行列車をついらくさせたのは、電気鳩のしわざでありました。高一は、そんなこととはしらず、ただ鳩舎へおりた電気鳩が、だいじな伝書鳩をころしたのにちがいないとおもって、愛犬マルといっしょに、この山のおくのほら穴の前まで、電気鳩をついせきしてきたのでありました。
 マルは、しきりとはなをならして、ほら穴のなかをにらんでいます。
「マル、しっかりたのむよ」
 高一のうまい工夫とマルのてがらとで、電気鳩は、このほら穴のなかにはいったことがわかりましたから、つぎは、なかにはいって電気鳩をうまくつかまえることです。
 高一は、穴のなかにはいった鳩などはわけなくつかまえられるものとおもっていました。それで、いさましくも高一はマルをつれて、まっくらなほら穴のなかにずんずんはいって行きました。用心のために、もってきた懐中電灯がきみのわるいほら穴の中をてらして、とても力づよいのです。しかし、かんじんの電気鳩は、どこまでふかくはいったものか、いっこう、そのすがたが見えません。
「へんだなあ。どこへかくれちまったんだろう」
 高
前へ 次へ
全54ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング