錠にぶつからせました。すると錠から、ぱちぱち火花がでたかと思うと、たちまちやけきれてしまいました。
 高一は、とびらに手をかけてひきました。とびらはすぐあきました。
「ああ、あいた」
 と、さけんで、高一は中にとびこみました。うすぐらいへやのすみに、ひげぼうぼうの日本人が手をしばられていました。
「あっ、お父さまだ」
 高一はなみだとともにかけよりました。
「おお、お前は――お前は高一か!」
 秋山技師は、よろよろとたちあがって、高一にからだをすりつけました。あまりの思いがけなさに、またあまりのうれしさに、あとはなみだばかりで言葉もでません。
「さあお父さま。すぐここをにげましょう」
「ああ高一、それはだめだよ。敵兵にみつかってころされるばかりだ」
「お父さま、大丈夫ですよ。ぼくは電気鳩をもっているんですから」
「えっ、電気鳩……」
「そうです。電気鳩さえあれば、どんな大敵がきてもだいじょうぶです。さあはやくにげましょう」
 高一が、父秋山技師をつれてトーチカを出たとき、ちょうどそこへ、大石大尉が陸戦隊をひきつれてかけつけました。大尉も決死のかくごで、中の島へせめこんできたのです。しか
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