る電気鳩を、ゴムの袋にいれて腰にさげ、一頭の軍用犬をつれて、川上から船にのりました。
 さいわい、川の上には朝ぎりがもやもやとたちこめたので、うまく敵兵の目をくらまし、ぶじに中の島にこぎよせることができました。
 さあ、これからどうして、お父さまの秋山技師をたすけだすか?
 高一としては、もとより命をなげだしての大しごとです。父親が敵にとりこにされているのをみて、どうして、じっとしていられましょうか。また、日本の国をまもる「地底戦車」を発明したお父さまを、いつまでも敵にうばわれていて、それでいいものでしょうか。といって、日本の兵隊さんがせめれば、お父さまのお命があぶない――子供なればこそできるかもしれないという、今日の大冒険なのです。
「お父さまをぶじにすくいだすことができれば、ぼくは、死んでもいいんだ」
 島についた高一は、まず船のなかから、りんごのいっぱいはいったかごを上にあげました。そして、軍用犬をつれて島にとびあがりました。
 高一は、りんごのかごをかたにかけて、トーチカの方へ歩いてゆきました。
「こら、少年まて。どこへゆくんだ」
 思いがけない立木のかげから、銃剣をかまえた敵
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