金庫をあけて、中から一枚の地図をとりだし、高一とミドリの前にひろげました。
 その大地図は、国ざかいふきんのくわしい図面でした。なかほどに大きな川がながれており、その川のまん中に、中の島があります。
 その中の島を大石大尉はゆびさして、
「この中の島なんだよ。あなたがたのお父さまがとりこになっているところは――」
「えっ、とりこですって」
「そうだ、敵のため、ここにつれこまれたのだ。敵はお父さまの発明した『地底戦車』のひみつをしりたくて、こんなひどいことをしたのだよ」
「なぜ、助けださないのです」
 高一はこぶしをにぎってさけびました。
「まあ、きてみてごらん」
 高一とミドリは、大石大尉にともなわれて、ざんごうへ出ました。そこから二本の角《つの》がでたような望遠鏡で、中の島の方をそっとのぞかせてくれました。
「ああ、これはトーチカだ」
「えっトーチカ。トーチカって、あの――」
 きょうだいのおどろくのもむりではありません。鉄とコンクリートでかためたちいさい要塞《ようさい》で、そのちいさい穴から大砲や機関銃が、いつでもうてるように、こっちをむいているのです。せめてもなかなかおちない要塞
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