れた魚のようによわってしまうだろう」
 ミドリは、それよりもお父さまと高一兄さんとを、早くたすけてください、とたのみました。
 いよいよあやしいほら穴にむかうことになって、憲兵さんたちは、こまった顔をしました。そのほら穴へは、どう行けばいいのでしょう。
 そこへ、おりよく愛犬マルが、足をひきながらかえってきました。
「ああマルか……。兄ちゃんは?」
 ミドリは、すぐ庭にとびだしてみましたが、高一のすがたはどこにもみえません。マルだけが、ほら穴からぬけてきたものと見えます。
 マルという、いい道案内ができたので、憲兵さんたちはよろこびいさんででかけました。
 ところが山の中にはいった時は、日がまったくくれてしまいました。そのうえマルがどこかに行ってしまったので、憲兵さんたちは、どうしてよいかわからなくなってしまいました。
 その時です。上の方でくわっくわっというなきごえがしたとおもうと、一つの光るものが、さっととんできました。おそろしい電気鳩があらわれたのです。


   ぬけ穴


 おそろしいスパイ団のため、山の中のほら穴に、とりこになっている高一少年とお父さまは、今どうしているので
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