》に、それと丁度《ちょうど》相《あい》重《かさな》って、兇器によるとは思われない皮膚と筋肉との損壊《そんかい》状態を発見したことにある。その部は、鋭い爪でひきさいたような形になって居て、尚《なお》そのうえ、皮膚と筋肉の一部に連続的な黄色い燃焼の跡のようなものがある。これはおかしいと更に解剖をすすめたところ、遂にふみ子の死因が、短刀による心臓部《しんぞうぶ》刺傷《ししょう》であると判断せられていたのは大間違いで、実は高圧電気による感電死であり、その高圧電気は、ふみ子の乳下《ちちした》と、万創膏の貼《は》りつけてあった首の後部とに電極《でんきょく》を置かれて放電せられたもので、相当強い電流が心臓を刺し其の場に即死をとげたことが判明した。この驚くべき事実が報告されてみると、警視庁では、第一の犠牲者の春江|惨殺《ざんさつ》事件に於ても同様の手段がとられたものと確信をもつようになった。それは、春江の場合には頸部《けいぶ》に、小さい万創膏が貼りつけられてあったのを覚えている係官が居たことから判って来たのである。ここに電気商岩田京四郎は非常な不利な立場となりカフェ・ネオンの頻繁《ひんぱん》な電気工事
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