いう意味だったのです。わしは喋《しゃべ》るのが下手《へた》でしてな、どうか、お笑いください。あっはっはっはっ」


   怪しい花火

 キンギン連邦の女大使ゴールド女史の機嫌は、辛うじて、直ったようであった。
 それから祝宴は、順調に進んだ。
 共産主義から出発したアカグマ国は、途中でいつの間にか、帝国主義に豹変《ひょうへん》し、今では、昔のスローガンとはまるで反対なものを掲げ、ことにイネ州においては、行政官は極度の資本主義的趣味に浸《ひた》っているのであった。だから美酒あり、豪肴《ごうこう》あり、麗女あり、いやもう百年前の専制王室だったときのアカグマ国宮廷の生活も、まさかこれほどではなかったろうと思うくらい豪華を極めたものであった。
 そういう豪華版は、何の力によって招来したのかといえば、これすべて、一億に近いイネ州の人民の膏血《こうけつ》によって、もたらされたものであった。
 そのころ、舞台では、当日の大呼び物であるところのドラマ『イネ国の崩壊』が始まっていた。一万五千人にのぼる主客は、固唾《かたず》をのんで、その舞台面に見入っていた。
 イネ国の崩壊!
 イネの国民にとっては、
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