けこのイネ州の統治三十周年をお祝いいたします」
「いやあ、ありがとう。キンギン国の使臣から、そういっていただくのは、このうえもない喜びです。つつしんで、貴国の大統領閣下へよろしく仰有《おっしゃ》ってください」
大使ゴールド女史は、スターベア大総督の挨拶《あいさつ》には、無関心である如く、
「さっきのお言葉のうちに、わがキンギン連邦の人民として、黙っていることができないものがございましたが、大総督閣下には、すでにお気付きでいらっしゃいましょうね」
と、意外にも強硬な語気でもって、スターベアを突いた。
「えっ、なんですって。このわしが、善隣キンギン連邦の神経を刺戟《しげき》するようなことをいったと、仰有るのですか。その御推察はとんでもないことです」
「そうとばかりは、聞きのがせません。もし閣下が、妾《わたし》の位置においでだったら、やはり、同じ抗議を発しないでいられますまいと存じます」
「ほう、そうですか。そんなに大使閣下を刺戟する暴言をはいたとは、思いませんが……はてどんなことでしたかな」
大総督は、本当にそれに気がつかないのか、それとも、わざと白《しら》ばくれているのか、どっちで
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