方の陣営とを問わず、重要な地点において現在どんな事件が起っているかは、すべてこのテレビジョンによって明かにされていた。
中には戦場を疾駆《しっく》する戦車の中から、外をうつしているのもあって、ときどき、スクリーンが、ぱっと赤くなって、何にも見えなくなることがあったが、それは、そのテレビジョン送影機を積んだ戦車が、敵の爆弾か砲弾にやっつけられて、テレビジョンの機械もろとも、粉砕してしまうためだった。
赤外線を利用しているので、テレビジョンのスクリーンを通じて、夜の戦場が、昼間とまったく違わないほど明るく見えていた。
そのテレビジョンは、同時に、無線電話装置も持っていて、スターベア大総督は、スクリーンの上の人物と話をすることも出来るのであった。
いま大総督は、スクリーンにうつったZ軍司令官と、重大な会話をとりかわしている。
「なんじゃ、なんじゃ、なんじゃ」
と大総督の機嫌は、はなはだ斜めであった。
「はあ、はあ、はあ」
Z軍団司令官は、ただもう恐れ入っている。
「貴官を頼みにしていたばかりに、作戦計画は根柢《こんてい》から、ひっくりかえった。第一岬要塞が奪還できなければ、貴官は
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