博士が一向動きだしたという知らせに接しないのであった。
 将軍のところへ出入する情報局|蒐集官《しゅうしゅうかん》たちは、決《きま》って、将軍から同じ趣旨《しゅし》の質問を受けるのだった。
「おい、金博士の動静《どうせい》についてのニュースはないのか。すくなくとも一巻のニュース映画になるくらいのものは持って来い」
 将軍は、金博士の行動のニュースに飢《う》えているのであった。
 情報蒐集官たちは、残念ながら、博士についてのニュース材料の持ち合わせがなかった。それで次回から、せいぜい気をつけることにして、金博士の身辺《しんぺん》を猟犬《りょうけん》の如く、或いはダニの如く、或いは空気の如く搦《から》みついて、何を博士が実行に移しているかを調べたのであった。
 その結果は、毎日毎夜それぞれの情報蒐集官から、ゴンゴラ総指揮官のところへ集ってきた。
「金博士は、本日午前十時、セバスチァン料理店に現れ、午後二時まで四時間に亘《わた》り昼酒《ひるざけ》をやり、大いに酩酊《めいてい》せり」
「ふん、大いにやっとるな」
 と、ゴンゴラ将軍は次の報告書を取上げる。
「金博士は、本日午後二時十五分より、カ
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