二項、第三項を設け、腕の取り付け個所につき例の第一案乃至第三案を並べたものである。これで金城鉄壁である。
余は、もう一度読みかえすと、それをタイプライター学校へ持って行って、至急叩いてくれるように頼み、その足で、製図商会へいって、三本腕の製図を依頼して来た。
3
×月×日 晴後曇。
本日『多腕人間方式』の出願書類を麹町三年町の特許局出願課窓口へ持参し、受付けてもらった。これで、あとは、審査官の出様を待つばかりである。
今、特許局は、人手不足であるから、審査の済むのは、明年の春ごろであろう。
×月×日 雪。
午前十時、田村町事務所へ出勤。
錠をあけて、部屋に入る。
給仕高木は、ついに辞職した。母親が病気だといっていたが、これは嘘で、本当は軍需工場へ通うことになったらしい。その工場には、日比谷公園のよりも、もっといいブランコがあるのであろう。
そこで、このごろは、余ひとりで出勤し、余ひとりで掃除もすれば、茶も沸かす。結局この方が、気楽でよろしい。
外套を脱ぎながら、ふと気がつくと、入口に封筒がおちている。特許局からの通知状だと、一目で分った。
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