いものも、そこにあった。
「にゃーお。う、う、う」
「これがほしいんだろう。さあ、おたべ」
 青二は、魚の骨を、光る目玉の下へおいてやった。すると、かりかりと骨をかむ音がした。骨がくだけて、机の上からすこしもちあがった。そしてそれはやがて線のようにつながって、だんだんと上にあがり、それから横にのびていった。
「き、気持がわるいなあ」
 青二は、ぞっとした。魚の骨が、動物の口へはいってくだかれ、それから食道をとおって、胃ぶくろの方へ行くらしい。それが透《す》いてみえるのだった。
「ふーん。たしかにこれは見えない猫だ。透明猫だ。なぜこんなふしぎな動物が生きているんだろうか」
 青二は、おそろしくもなったが、またこの見えない猫が貴重なものに思われてきて、膝の上にのせてしきりになでてやった。
 そのうちに、二つの目玉が動かなくなった。透明猫は、膝の上でねむりはじめたらしい。しかしそのとき、青二がふしぎに思ったのは、拾ったときはたいへんはっきり見えていた目玉が、今はぼんやりとしか見えないことだった。

   おそろしき事件

 あくる日、青二はいつものように五時に起きた。
 父親は、まだねていた
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