い猫みたいな動物のことを、母親に話をしようかと思ったが、いやいやそうでない、そんなあやしいものを拾って来たことを、お母さんが知ったら、どんなにおどろくかしれない。そして早くそのようなものは捨てておしまいといわれるだろう。それではせっかくこわい目をして拾ってきたのに、つまらない事になってしまう。そう思って青二は、その怪しい動物を抱いたまますぐ二階の自分の部屋にあがってしまったのである。
 二階へあがったものの、青二は、ちょっと困ってしまった。このあやしい動物をどこへおいたらいいかということだ。そのままおいておけば、きっと出ていってしまうだろう。逃げられたんでは、いやだ。
 戸棚《とだな》に入れようか。いや、猫はふすまを破ることなんか平気だから、戸棚では安心ならない。
「青二や。なにをしておいでだい。ご飯ですよ。早くおりていらっしゃい」
 はしご段の下から、母親が二階へ声をかけた。
「はーい。今行くよ」
 さあ、どうしようかと、青二は困ってしまった。
 が、困ったときには、よく名案がうかぶものである。青二は、机のひきだしをひっぱりだして、ひもを探した。赤と青のだんだらの、荷物をくくるひもが
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