笛で吹いて、いい気持で歩いていった。
そのとき、道ばたで、「にゃーお」と、猫のなき声がした。
青二は猫が大好きだった。この間まで、青二の家にもミイという猫がいたが、それは近所の犬の群れにかこまれて、むざんにもかみ殺されてしまった。青二はそのとき、わあわあと泣いたものだ。ミイが殺されてから、青二の家には猫がいない。
「にゃーお」また猫は、道ばたで鳴いた。崖下の草むらの中だった。
青二は口笛を吹くのをやめて、猫の鳴き声のする方へ近づいた。
が、猫の姿は見えなかった。どこへにげこんだのだろうと思っていると、また「にゃーお」と猫はないた。
青二はぎくりとした。というのは、猫のないたのは彼が草むらの方へ顔をつきだしているそのすぐ鼻の先ともいっていいほどの近くだったからである。
しかも、猫の姿は見えなかった。
青二は、うしろへ身をひいて、顔色をかえた。ふしぎなこともあればあるものだ。たしかに猫のなき声がするのに姿が見えないのである。
「にゃーおん」猫はまたないた。青二は、ぶるっとふるえた。彼は、あることを思いついたのだ。
(これはひょっとすると、死んだミイのたましいがあらわれたのでは
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