いるが、大丈夫ですかい」
「なに、ごとんごとんといっているって。あ、そうか。ひょっとしたら、豆潜水艇が、車の上からすべりおちそうになったのかもしれない。まてよ、いましらべてやる」
 トニーは中腰《ちゅうごし》になって、うしろへ懐中電灯をてらしてみました。
「大丈夫だよ。綱はちゃんとしているよ」
 トニーは、バスと車体とをむすびつけている綱のむすび目が、しっかりしているのをみて、安心したのでありました。
 そういわれて、運転手は、
「そうですかねえ。しかし、ごとんごとんと、いっていますよ。ふしぎだなあ」
「それは、お前の気のせいだろう」
「そうですかなあ」
 運転手の耳には、トニーにはきこえない変な音がかんじるのでしょうか。
 しばらくたって、運転手はまたトニーにはなしかけました。
「あ、またきこえた。トニーの旦那、いままた、大きくごっとんと、うごきましたよ。ああ気持がわるい。そのうちに、豆潜水艇が、道のうえに、ころがりおちてしまいますよ。もういちど、よくしらべてください」
「大丈夫だというのになあ」
 トニーは、もういちど、綱のむすび目をよくしらべました。しかし、さっきと同じで、べつに
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