国道には、お巡《まわ》りさんが、交番の中から、じっと夜の番をしていました。
 もし、国道をあやしいものがとおれば、「とまれ!」と命令して、しらべるつもりでありました。
 お巡りさんの前を、豆潜水艇をのせたトラックは、すこしもとがめられないで、通りすぎていきました。
 その次の交番でも、やはりおなじように、通りすぎました。
 なにしろ、お巡りさんが見ても、憲兵《けんぺい》さんが見ても、造船学の大家が見ても、まさかトラックのうえに豆潜水艇がのっていると、気がつくわけがありません。
 それもそのはずです。そのトラックの上にあるのは、どう見てもバスとしか見えません。まさかその下に、豆潜水艇がかくれていようなどとは、神さまだって気がつかないでしょう。
 トラックは、どんどん国道を西に走りつづけます。
 豆潜水艇は、トラックのうえで、ごとんごとんと、ゆれています。
 トラックの運転台では、運転手と、その横にのっているトニーという外人とが、英語で話をはじめました。
「トニーの旦那、ちょっとうしろを、みてください」
「なんだって、うしろをみろというのかね」
「なんだか、うしろでごとんごとんといって
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