とけた様子もありませんでした。
くらい海
そのうちに、トラックは、大きな川っぷちにつきました。
石垣《いしがき》の下に、だるま船が待っていました。
岸から板がわたしかけてありましたから、トラックのうえのにもつであるバスは、しずかに板のうえへおろされ、そしてだるま船の中につみこまれました。
「オーライ。さあ、早いところ、でかけよう」
トニーが手をあげると、だるま船は、すぐエンジンをかけました。
一同は、だるま船の中にのりうつりました。だるま船は波をけたてて、川下へくだっていきました。
くらい川の面には、このだるま船の行く手をさえぎるものもいません。
「しめた。水上警察《すいじょうけいさつ》も、こっちに気がつかないらしい。さあ、どんどんいそげ。本船じゃ、まっているだろうから」
だるま船は、川口を出て海に入ると、こんどはさらに速度をあげて、沖合《おきあい》へすすんでいきました。
「トニーの旦那、針路は真南でいいのですかね」
「まあ、しばらく真南へやってくれ。そのうちに、無電がはいってくるだろうから、そうしたら、本船の位置がはっきりする」
トニーは、舳《とも》に腰
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