をおろして、しきりに受信機をいじっていました。
 それからしばらくたって、トニーが、耳にかけていた受話器を両手でおさえました。
「あ、本船が出た。エデン号だ」
 トニーは、耳にきこえるモールス符号《ふごう》を、すらすらと書きとっていましたが、そのうちに、彼も電鍵《でんけん》を指さきで、こつこつと、おして、なにごとかを無線電信で打ちました。
 そうして、両方でしきりに通信をかわしていましたが、やがてそれもおわりました。
「おい、わかったぞ。左舷《さげん》前方三十度に赤い火が三つ檣《ほばしら》に出ている船が、われわれを待っているエデン号だそうだ。船をそっちへ向けなおして、全速力でいそげ」
 トニーは、舷《ふなべり》をたたいて、そうさけびました。船は、向きをかえると、出るだけ一ぱいの力を出して、くらい海面をいそぎました。
 エデン号に行きついたのは、それから約二時間のちのことでありました。
「エデン号かね。こっちはタムソン部長の命令で、豆潜水艇をつんできたトニーだよ」
「おう、まっていた。トニー君。大へんな手がらをたてたものだな。わが海軍でねらっていた青木学士の豆潜水艇を、そっくり手に入れる
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