の椅子には誰がすわるのでしょうか。
下士官が、扉《ドア》をひらいて、さらに奥にはいっていきました。やがて彼が出てきたときには、白い麻の背広服をきた一人の紳士をともなっていました。
からだの大きい、顔のたいへん赤く、鼻のとがった、そしてほそい口髭《くちひげ》のある、目のするどい人物でありました。その紳士が、例《れい》のふかふかした肘かけ椅子に、どっかり腰をおろしました。その様子から考えると、彼はどうやら隊長らしいのでありました。
春夫は、その隊長紳士が、なにをはじめるのかと、目をみはっていました。
すると、その隊長紳士は、ポケットから、ピストルを出して、机の上におきました。それから、青木学士と春夫を、ぐっとにらみつけ、
「ああ、ここでは、わしの命令にしたがうか、それとも、このピストルの弾丸《だんがん》をくらって死ぬか、二つのうち一つしかないのだ」
と、いやにおどかし文句をならべ、
「われわれは、いつでも、ほしいと思ったものを、かならず手に入れる力をもっている。お前たちは、小型潜水艇を、われわれの手にわたすまいとして、いくどもにげまわったが、もうこれからのちは、そんなむだなことは
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