す。
 それよりも、春夫をおどろかせたものがありました。それは、そのあたりの風景でありました。
「こんな島があるだろうか?」
 青木は口蓋のすきまからここをのぞいて、これは島だといいました。なるほど、下は砂地です。そして椰子《やし》のような植物が生えております。小さいけれども、岩のようなものも見えます。海中から、いきなりこんなところにつれてこられたなら、なるほど、だれだってここは島だとおもうにちがいありません。
 しかし島にしては、ちとおかしいことがあります。それは、水平線も見えなければ、あの青い海も見えないことです。頭の上を見ますと、すりガラスの天井があります。
 これを島だというのは、どうでしょうか。一体ここはどうした場所なんでしょう。
「こら、少年。なぜ、じっとしていない。きょろきょろすることは許さん」
 下士官のぺらぺらいう英語がわからないので、なおもきょろきょろしていたものですから、水兵がこわい顔をして、つかつかとそばへよってきました。
 青木は、それと気がついて、春夫に注意をあたえ、彼を水兵からかばいました。


   隊長らしい紳士《しんし》


 これからどうなることか
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