なことです。一体ここはどこなのでしょう。
エンジンの音
とんとん、とん、とんとんととん。
今しめたばかりの口蓋《ハッチ》が、外からしきりにたたかれるのでした。春夫少年は、青木学士の顔を見上げて、
「青木さん、あの音は、なんですか」
といえば、青木学士は、しっといって、目をくるくるさせました。青木学士は、そのとんとんいう音に、じっと耳をすましています。
しばらくして、青木学士は春夫のうでをぐっとつかみ、
「あれはモールス符号《ふごう》だよ。国際通信の符号によって、あの音をとくと、『ここを、すぐあけろ。あけないと、外から焼き切るぞ』といっているのだ。焼き切られては困るぞ」
「焼き切るぞなんて、けしからんアメリカの水兵ですね」
「しかし、本当に焼き切られてしまっては、とりかえしがつかない。なぜといって、口蓋に大孔《おおあな》があくわけだから、そうなると、この豆潜水艇は、二度と水の中へもぐれなくなるわけだ。だから、しかたがない。しゃくにさわるが、艇を傷つけられてしまってもこまるから、口蓋をあけることにしよう」
「でも、口蓋をあけて外に出ると、アメリカ水兵のために、捕虜《ほ
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