じゃないかねえ、トニー君」
と、タムソン部長は、もう一人の、女のようにやさしい顔つきの青年によびかけました。
「はい。部長のおっしゃるとおりです。命令ですから、やるほかありません。早く、どうしてそれをぬすみだすか、その方法をごそうだんしようじゃありませんか」
「いや、トニーの言葉だけれど、いくらぬすむといっても、かりにも潜水艇一|隻《せき》だ。あんな大きなものをぬすめると思っては、まちがいだ」
この話から考えると、三人は潜水艇をぬすむ話をしているのです。そしてその潜水艇というのは、じつはさっきお話しした青木学士のつくった豆潜水艇のことなのでありました。だからこれはたいへんです。
「考えれば、きっといいちえが出てくるものだ。およそ世の中に、人間がちえをしぼって、できないことはない。さあ、三人でちえを出そうじゃないか」
と、タムソン部長は、二人をはげましながら、酒のはいったびんをとりあげて、二人のまえのさかづきに、酒をついでやりました。
毒《どく》ガス弾《だん》
酒をのみながら、ものを考えて、どんなちえが出るでしょうか。とにかくその夜のうちに、タムソンたちは、ついにあ
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