につけることにして、私はここで、二人とも、まだ気がついていない一大事について、皆さんにお話いたしましょう。
皆さん、ここは東京の山の手にある大きな洋館のなかです。
森にかこまれたこの洋館は、たいへんしずかです。
窓のそとは、まっくらな夜です。そして、ほうほうと、森の中からふくろうの鳴いているこえがきこえます。
部屋には、明るく電灯がついています。そして三人の西洋人が、大きな椅子《いす》にこしをかけて、お酒をのみながら、話をしています。
「むずかしいのは、わかっているよ。しかし、われわれはどうしても、命令にしたがって、やるほかない」
三人のうちで、一ばんえらい人が、英語でそういいました。この人は、たいへんやせぎすですが、一ばんりっぱな顔をしています。
「しかしタムソン部長。あれだけ大きいものをもちだすのは、なかなかですよ」
軍人のように、がっちりしたからだをしている西洋人が、両手を一ぱいにひろげました。この人の顔は、酒のためにまっかです。
「スミス君。われわれは今、大きいだの、おもいだの言っていられないのだ。本国の命令で、ぬすめといわれたのだから、ぬすむよりしかたがない。そう
前へ
次へ
全44ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング