気送り方、はじめ! はじめ! 傾度《けいど》四十五……」
豆潜水艇の中で、青木学士はひとりでさけんでいます。自分で号令をかけて、自分で仕事をやっているのです。なにしろ、この艇の中には乗組員はたった二人しかいないのですから、いそがしいことといったら、たいへんです。
かん、かん、かん、かん。
金具がすれるような音がきこえています。それとともに、今までたいへん右舷へかたむいていた豆潜水艇が、すこしずつかたむきをなおしてくるのがわかりました。
「青木さん。うまくなおってきましたね」
「ああ、この分なら、あと十六七分のうちに、ちゃんとなるだろう」
エンジンとポンプとが、あらい息をはいて、力一ぱいうごいています。
「どうして、左舷のメインタンクが開かなかったんだろうなあ」
「だって、いきなり艇が海の中へおちたから、故障がおきたのでしょう」
「さあ、どうかね。とにかくそんなことはないようにつくったつもりだったがねえ」
青木さんは、ふしぎそうにそういいました。
青木さんは、艇が海のなかにおちたと知ると、すぐにエンジンをかけ、メインタンクを開いたのです。そうすると、水がはいってきますから、潜
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