とですきをみて、なんとか、にげだす方法を考えることにしようと決心しました。
そこで青木学士は、二三歩、怪外人の前へあるいていって、
「おい君。君がそんなにいうのは、あの豆潜水艇の中をしらべてみたが、どうしたら動いたり、浮いたり、沈んだりするのか、それがわからないので、僕たちをせめるのだろう。どうだ、あたったろう」
白服の怪外人は、それをきくと、うーんとうなって、また一そう顔をあかくし、下士官たちの方をふりむきました。
そこで、青木学士は、ここぞと思い、
「だから、わからないなら、わからないとはっきりいって、僕たちにおしえを乞《こ》えばいいじゃないか。礼をつくせば、僕だって、おしえてやらぬこともない。自分のよわ味をかくそうとして、いばりちらすなんて、よくないことだ」
こういわれて、さすがの怪外人も、こまった様子です。それからというものは、急に彼は態度をかえて、ことばをやわらげました。
「いや、わしも、べつだん、事をあららげたくはないのだ。君が、かくさずおしえてくれるというのなら、尊敬をもって、説明をきいてもいいと思っている」
なにが尊敬でしょう。自分たちに都合がいいとなると、どんな白々しいことでもいう彼らでありました。
「じゃあ、説明をしましょう。しかしその前に一つ、非常に不審《ふしん》なことがあるんだが、あなたにたずねて答えてくれますかね」
と青木学士がいいました。
「ははあ、交換条件というやつだな」
「まあ、そうですね。これはアメリカでもやることでしょう。承知してくれますね」
そういうと怪外人は、しばらく考えていましたが、やがてうなずいて、
「よろしい。一つだけ、君の質問に応じてもよろしい。ただし一つだけだよ」
青木学士は、一体なにを聞くつもりでしょうか。
とつぜんのさわぎ
「これは、ぜひ知っておきたいことですが――僕たちの命はないものだと知っているから、死に土産《みやげ》にきいておきたいと思うのだが、一体ここは、どこですか。島ですか、地下街ですか、それとも船ですか」
「ふーん、そんなことを知りたいというのか。そいつは、困ったね」
「さあ、答えてください。約束です」
「うむ、約束は約束だが……」
と、その怪外人はしばらく考えていましたが、やがて下士官をよんで、相談をしてから、
「よろしい。では話をしよう」
「それはありがとう」
「こ
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