て狙わなくとも、他の方法で観測した結果により、目標を見ずともうまく照準をつけることができるわけだった。ああしかし、この恐るべき攻城砲が亜鉛《トタン》屋根の下に隠されているなんてことを、誰が知っているだろうか。
 なんとかしてこの大秘密を知らせる方法はないものか。五郎造はもう自分の生命のことなどは思いあきらめた。
 そのときであった。
 奥まった扉ががらっと開かれると、顔を真青《まっさお》にした某大国士官が、一隊の兵士を連れてとびこんできた。
「大佐どの、大変であります。いま九機から成る日本の重爆《じゅうばく》が現れて上空を旋回しています。どうやらこの攻城堡塁《こうじょうほうるい》が気づかれたようですぞ」
「なに、重爆が旋回飛行をやっているって? それは本当のことか」
「本当ですとも。ああ、あのとおり聞えるではありませんか、敵機の爆音が……」
「うむ、なるほど。これはいけない。東京要塞長はどこにいられるだろう。すぐ指揮を仰がねばならぬ」
 そういっているところへ、けたたましい電話のベルが鳴った。
 大佐といわれた士官はその方へ飛びついていったが、受話器を握って大声に喚《わめ》いた。
「―
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