ある。そして、とんださわぎが、この戦車の中ではじまることとなったのである。
沖島速夫は、もちろん、生命をなげ出していた。別に、この地底戦車をスパイするつもりでやったことではなく、ただ、太平洋の彼方《かなた》で、真の日本人を知らず、ひとりよがりでいるアメリカ人たちに、日本人の意気を見せて、ちょっとおどろかせてやりたかっただけのことである。
南極地方へ上陸したのち、地底戦車の中からおどり出して、
「アメリカさん。ばあーッ」
と、やりたいだけのことであった。ところが、ひょんなことから、その戦車をつんでいた船が沈没してしまったため、たいへんな冒険をやるようなこととなった。
助かるか助からないか、沖島速夫自身も、全く知らない。しかし彼は、むかしから、いかなるときにも、おちつきを失わない男だったから、生命なんかのことで、取り越し苦労をするのは馬鹿者のすることだと決め、自分は生命を神様にでもあずけたつもりで、そんな心配はごめんこうむって、ただ斃《たお》れてのちやむの精神で、ここまでやって来たのである。
ところが、パイ軍曹もピート一等兵も、がらは大きいし、いばることも知っているが、今地底戦車
前へ
次へ
全117ページ中73ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング