というのは、どうもふにおちませんよ。どうかいってください。われわれは、どんなことをきかされても、尻込《しりご》みをしませんよ。国家へ忠誠をちかいます」
「知らないんだ、本当に」
「ほんとですか。戦車兵が、船にのる場合はどんな任務のもとにおかれるのでしょうか。それを考えてみてください。私だけに、そっといってくだすってもよろしいんですよ。私は、誰にも洩《も》らしませんから。それなら、いいでしょう」
「だめだ。ほんとにわしは知らないのだ。いうときには、皆にいうよ。だってそうじゃないか。中尉だの一等兵だのという区別はあるが、無名突撃隊の一員であることについては、すこしもかわりがないのだからなあ」
パイ軍曹は、もう口を開こうとはしなかった。だが、彼は、腹の中で舌うちをしていた。
(どこまで強情《ごうじょう》な中尉だろう。よし、今にみておれ。のっぴきならぬ何ものかをつかまえて、これでも話をせぬかと、ぎゅうぎゅういわせてやろう)
カールトン中尉は、パイ軍曹の横顔をちらりと見て、さりげなく煙草《たばこ》の煙をふーっと吹いた。
「食事です。食事を入れます」
高声器から、へんななまりの、子供のこえが
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