「さあ、パイ軍曹。君に、これがとれるものなら、もっと倍くらいの力を出したまえ」
「な、なにを。うーん」
 パイ軍曹は、うんとがんばって、死にものぐるいの力を出して、機銃を前にひっぱったが、機銃はあいかわらず、巌《いわお》のようにびくともしない。軍曹の額《ひたい》からは、ぼたぼたと、大粒の油あせが、たれる。
「力自慢で、わしが負けるなんて、そ、そんなはずはないのだが……」
 幽霊は、わざとらしい咳払《せきばら》いをして、
「戦車の中には、食料品が不足だというのに、無駄に、力を出していいのかね」
「えっ」
 この戦車の中には、食料品の貯《たくわ》えがないことは、はじめからしっていた軍曹だった。だから、黄いろい幽霊のことばは、パイ軍曹の腹へ、大砲のごとく、こたえた。彼はとたんに機銃から、ぱっと手をはなした。
「それで、もともとだ」
 と、黄いろい幽霊は、いった。
 パイ軍曹は、なんだか急に、眼の前がくらくなったように感じた。それは、空腹のところへあまり力を出しすぎたためだ。
「君でなくとも、だれがやってみても、この機銃を人力で取りはずすことはできないよ。このとおり、大きな金具で、はさまれてい
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